TODAY IN MUSICAL MARGINS
ベートーヴェンが、
出版社を
「地獄の犬」と呼んだ日。

出版社への苛立ちを、ベートーヴェンはただの悪口では済ませませんでした。相手を「地獄の犬」にして、手紙の中へ悪魔まで呼び込みます。
1825年8月24日、バーデンに滞在していた54歳のルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンは、友人でヴァイオリン奏者のカール・ホルツへ手紙を書きました。冒頭では、Holzがドイツ語で「木」を意味することに掛け、相手を「最高のマホガニー材よ」と呼んでいます。
話題は、作曲中の弦楽四重奏曲 変ロ長調 Op.130と出版社との交渉でした。ベートーヴェンはライプツィヒの出版社ペータースを「地獄の犬」、音楽評論家ロッホリッツをメフィストフェレスになぞらえ、ゲーテ《ファウスト》で知られるアウアーバッハの酒場へ送り込みます。そこへベルゼブブまで現れて耳をつかむという、怒りと大喜利が混ざったような文面です。
一方、仕事の報告は具体的でした。Op.130は6楽章になり、胃の具合さえよければ月内に仕上げたい、と書いています。大作の進捗、出版交渉への苛立ち、胃痛の訴えを、悪魔だらけの冗談で一通に詰め込んだ日でした。
AUTOGRAPH LETTER
「地獄の犬」が登場する自筆書簡を、確かめる。
Sotheby’sの資料ページで、1825年8月24日付の自筆書簡の来歴・内容・原文抜粋を確認できます。
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出典・参考
- Sotheby’s, Beethoven autograph letter to Karl Holz
- William Kinderman, “Flea Circus on the Keyboard”
- Thayer, Ludwig van Beethovens Leben, 1825
本記事は、1825年8月24日付の自筆書簡の目録・原文転写と研究論文をもとに、出来事を日本語で要約しています。見出しの「地獄の犬」は、書簡中の「HöllenHund」を日本語にした表現で、出版社ペータースを指します。