TODAY IN MUSICAL MARGINS
モーツァルトが、
ロバに乗り、大食いの
「聖人」を疑った日。

14歳のモーツァルトは、イタリアの習慣にならってロバに乗ったあと、「聖人」と評判の修道士が何をどれだけ食べたかを、家族への追伸で細かく数えました。
1770年8月21日、父レオポルトはボローニャ郊外のクローチェ・デル・ビアッコから、ザルツブルクの妻へ手紙を書きました。その末尾に、ヴォルフガングも姉ナンネル宛ての追伸を添えます。冒頭は「まだ生きていて、とても元気」。そして、その日、イタリアの習慣なので自分も試したくなり、ロバに乗ったと報告しました。
話はすぐ、同行していたドミニコ会の修道士へ移ります。周囲から「聖人」と見られていたものの、モーツァルトは少し疑っていました。理由として挙げたのは、朝のチョコレートに続くスペインの酒精強化ワイン、食卓での大量のワイン、メロン、桃、梨、5杯のコーヒー、鳥料理一皿、さらにミルクとレモン二皿。午後にもよく食べる、と観察は続きます。
信仰や教義ではなく、食卓の量から「本当に聖人なのか」を考える。ロバ乗りの報告から始まった短い追伸は、14歳らしい好奇心と遠慮のない観察眼で終わりました。この追伸に音楽の話は一度も出てきません。旅先の一日を面白がり、家族に伝えた14歳の横顔だけが、妙に鮮明に残っています。
ORIGINAL LETTER
ロバと「聖人」の食事を書いた手紙を、読んでみる。
Digital Mozart Editionで、1770年8月21日付書簡の原文・英訳・自筆資料を確認できます。
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