TODAY IN MUSICAL MARGINS
ベルリオーズが、
「ひどいピアノ」に
追われた日。

詩人に会いに行くより、朝9時から夕方5時まで「ひどいピアノ」を聴く。それがこの日のベルリオーズの仕事でした。
1855年8月16日、51歳のエクトル・ベルリオーズは、パリにいた詩人ハインリヒ・ハイネへ手紙を書きました。ハイネから届いた新刊『Poèmes et Légendes(詩と伝説)』を読み、すばらしい詩のお礼に直接訪ねたい。ところが、それがなかなかできない理由がありました。
ベルリオーズは同年のパリ万国博覧会で、出品された楽器を審査する国際審査員を務めていました。手紙によれば、勤務は毎日朝9時から夕方5時まで。偉大な詩人の言葉を聴きに行く代わりに、「ひどいピアノ」と「さらにひどい製作者たち」を聴かされている、と大げさに嘆いています。
それでも、もしこの日の「強制労働」が、たった50点の楽器を聴くだけで済むなら、今日にも会いに行く、と付け加えました。50点が「たった」になるほどの審査量。オーケストレーションの大家にとって、万博の裏側は新しい楽器との華やかな出会いというより、同じ音を延々と聴き比べる耐久戦だったようです。
ORIGINAL LETTER
「ひどいピアノ」に追われた手紙を、読んでみる。
The Hector Berlioz Websiteで、1855年8月16日付のハイネ宛書簡の英訳と、万博の楽器審査の背景を確認できます。
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出典・参考
- The Hector Berlioz Website, “Le Palais de l’Industrie – Exposition Universelle 1855”
- Presses universitaires de la Méditerranée, “Les instruments de musique jugés aux expositions universelles de 1851 à 1867”
- The Hector Berlioz Website, Biography
本記事は、ベルリオーズの1855年8月16日付ハイネ宛書簡と、パリ万国博覧会の楽器審査に関する研究資料をもとに、日本語で要約しています。「ひどいピアノ」「さらにひどい製作者たち」は、ベルリオーズの私的で誇張を含む愚痴であり、個々の出品者に対する客観的評価ではありません。