TODAY IN MUSICAL MARGINS
シューマンが、憧れの女性の
歌い方を日記で嘆いた日。

好きな人に自作曲を歌ってもらえた。それでも18歳の作曲家は、満足できませんでした。
1828年8月14日、ライプツィヒで法律を学んでいた18歳のロベルト・シューマンは、自作の歌曲について日記に書きました。当時、彼が強く心を寄せていたのは、8歳年上で既婚の歌手アグネス・カールス。彼女への思いと重なる1827年から翌年にかけて、シューマンは《漁夫》《アンナに》《思い出》《羊飼いの少年》など、初期の歌曲を書いていました。
シューマンにとって、それらの歌曲は単なる小品ではなく、自分の内面を写したものでした。けれども、作曲者の頭の中にあるものを、他人がそのまま表現することはできない。日記では、アグネスでさえ美しい箇所をうまく歌えず、自分を理解しなかった、と嘆いています。
憧れの人に自作曲を歌ってもらいながら、面と向かってではなく、日記で「わかってくれない」とこぼす。演奏の問題というより、自分の内面まで読み取ってほしいという18歳の期待が大きすぎたのかもしれません。作品を演奏者へ渡した瞬間、作曲者の思いどおりにはならなくなる――若いシューマンは、その現実に早くもぶつかっていました。
RELATED LISTENING
18歳のシューマンが書いた歌曲を、聴いてみる。
Hyperion公式ページで、1828年8月に書かれた《思い出》と《羊飼いの少年》を含む初期歌曲の録音・解説を確認できます。
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出典・参考
- John Daverio, Robert Schumann: Herald of a “New Poetic Age”, Oxford University Press
- Hyperion Records, Schumann: The Complete Songs, Vol. 8
- Schumann-Portal, Itinerar zu Robert Schumann
本記事は、1828年8月14日付の日記を引用・解説する研究書、初期歌曲の公式録音解説、Schumann-Portalの年譜をもとに、出来事を日本語で要約しています。アグネス・カールスに関する恋愛感情はシューマン側のものであり、彼女が応えたことを示す資料は確認されていません。